腸は、脳からの指令を受けなくても、胃から下りてきた食べものの成分を分析してほかの臓器から一番当てはまる分解酵素を出させ、勝手に食べものを消化吸収していきます。もし有毒なものが入ってきた場合には、多量の腸液を分泌して便をゆるくし、体の外へ排出しようとします。これが、いわゆる下痢であり、私たちの体の大事な防衛反応なのです。
そして、腸はいちばん異物に接触しやすい部分です。たとえば、寒い時期になると子供がよくかかる「嘔吐下痢症」という病気は、ロタウイルスやノロウイルスによって引き起こされますが、これは鼻や口から体内へ入り、胃の粘膜に感染するとあっという間に増殖して腸に達してしまいます。
腸と免疫力は密接な関係にある
腸管の粘膜やその周囲のリンパ管にはリンパ球がたくさん集まり、免疫系が活躍しています。腸の動きが速ければお腹が痛み下痢に、反対に動きが鈍いと便秘になります。
腸の動きがスムーズだと腸内環境が快適であるため、「セロトニン」というホルモンが分泌されます。脳内ホルモンとして知られるセロトニンですが、実はその多くは消化管に存在していて、腸は第二の脳とも言われ、精神状態と大きな関係があります。セロトニンは心の安定を保ち、人を快活にするホルモンなので、不足すると感情にブレーキがきかなくなり、うつや不眠、ひきこもりなどになりやすいのです。
つまり、腸の状態が良いと気持ちも上向きになり、免疫システムの中の最強戦士であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活性化され免疫力が高まります。腸が若く健康であればあるほど免疫力は高く、腸年齢が若い人は脳年齢も若いという調査結果もあります。
このように、腸と脳と免疫は密接にリンクしています。免疫力との関わりから見ると、腸はストレスの影響を強く受けていることがよくわかります。
善玉菌を増やして腸を若く保つ
腸内で悪玉菌が増えると、発酵ではなく腐敗が進みます。腸内には相当な数の細菌の種類があり、それらは善玉菌、悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌の3つに分けられます。日和見(ひよりみ)菌というのは、腸内に善玉菌が多い時には善玉菌の味方をし、悪玉菌が多い時には悪玉菌の味方をする、どちらにもなりえる腸内細菌です。
悪玉菌はタンパク質を腐敗させて有害物質を発生させ、病気を引き起こします。一方、善玉菌は、腸内の働きを整えて便秘や下痢を防ぎます。また、善玉菌は悪玉菌の活動を抑制し、悪玉菌が生み出した有害物質を中和します。
腸内細菌のバランスの良さを考えたときの理想は、悪玉菌がいない状態です。しかし、悪玉菌は善玉菌よりも種類が多く生命力もはるかに強いので、現実にはこれは無理なことです。年齢とともに善玉菌はだんだん減少して、悪玉菌が増加していきます。
女性は便秘になると肌が荒れたり、ハリやツヤがなくなったりすることがよく指摘されますが、美肌のためには、外側から手入れをする前にまずは体の内側から変わらなければなりません。つまり、腸の状態を若々しくすることが大切なのです。
年齢を重ねたら、なおさら若い時よりも腸内環境に気をつけて、善玉菌を増やし悪玉菌を減らしていくようにしましょう。
悪玉菌を抑えて腸の不快な症状を解消するのは、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌です。